コラム
佐々木竹見・王者の眼差し
佐々木竹見(ささき たけみ)
元川崎競馬所属騎手。“鉄人”の愛称で知られる国内最多勝記録・7,153勝をあげた日本を代表する名手。
現在は地方競馬全国協会の参与として騎手候補生である後進の指導を行うほか、競馬のPRのために各地のイベントなどにも出演している。
令和6年度第10回開催 全日本2歳優駿(JpnI)他
12月9~13日の開催では、2歳ダートの頂点、全日本2歳優駿が行われました。勝ったのは牝馬のミリアッドラヴ。エーデルワイス賞から連勝で、デビューから3連勝としました。
同日最終レースに行われたのは、2024川崎ジョッキーズカップ・ファイナル。勝ったのは、14頭立て14番人気、単勝では261.6倍のクインズカヤノヒメで、鞍上は本田紀忠騎手でした。なお3着に入った新人の加藤雄真騎手が、シリーズ1勝、2着3回、117ポイントで、2位の藤江渉騎手(87ポイント)に差をつけての優勝となりました。
12日のメインに行われた2歳馬のJRA認定競走・シャイニングドリーム賞は、最後方を追走したレッドサラマンダーが向正面で一気に先頭に立って押し切り、8月以来の2勝目としました。
今回はこの3レースについて、佐々木竹見さんにうかがいました。(聞き手・構成/斎藤修)
2024年12月11日(水)全日本2歳優駿
優勝馬ミリアッドラヴ
吉原寛人騎手のホーリーグレイルが大外からハナをとりに行きましたが、やや強引な感じの逃げで、おそらくそういう作戦だったのでしょう。勝ったミリアッドラヴは無理せず2番手につけました。3コーナーでホーリーグレイルが一杯になると、ミリアッドラヴが自然と先頭に立って、4コーナー手前から追い出したのはタイミング的に少し早いような感じもしましたが、直線でもスピードが落ちませんでした。早めに先頭に立ったぶん、ゴール前で2着馬に迫られましたが、ゆったり流れての先行ならもっと差をつけて勝ったかもしれません。
3番手の内を追走したハッピーマンは、4コーナー手前では失速したホーリーグレイルを交わし、直線ではよく伸びてゴール前で差を詰めましたが、勝ったミリアッドラヴが止まりませんでした。ただ直線を向いたところで内に刺さって鞍上が修正するような場面がありました。そのあたりを修正できればもっとよくなりそうです。
北海道のソルジャーフィルドは中団からの追走で、向正面から追い通しでしたが、直線でもよく伸びていました。4コーナー手前で前が壁になるような場面があって、そこをスムーズにさばければもう少し際どいところまでいったかもしれません。
1番人気のナチュラルライズは直線でも伸びてはいましたが、スタート後の直線では頭を上げて引っかかっていました。前の馬に乗りかかりそうになったのかもしれません。向正面では前が飛ばしてくれたぶん、5番手で折り合いがつきましたが、前半スムーズに運べなかったところが残念でした。
2024年12月11日(水)2024川崎ジョッキーズカップファイナル
優勝馬クインズカヤノヒメ
ジョッキー戦のわりにスタート後の直線からペースが落ち着いて、そのぶん前が一団になって行きたがるような馬もいました。勝った本田騎手のクインズカヤノヒメは、その集団からやや離れて、中団よりうしろからの追走でした。直線半ばで外に持ち出したら一気に伸びて差し切りました。スローで流れて勝ちタイムも平凡だったということもありましたが、4コーナーで内に行かず外に進路をとったのもよかった。それにしても最低人気で、ゴール前で使った末脚には驚きました。
1番人気の岡村騎手(ノーブルウィスパー)は先行馬群の中ほど、ラチ沿いで脚を溜めていました。4コーナーから直線では馬群を捌いてラチ沿いを抜け、ゴール前で先頭に立ったところでは勝ったと思ったのではないでしょうか。ただ道中では囲まれて、4コーナーまで出ていくところがありませんでした。もう少しペースが流れていればこの馬に勝たれていたのではないでしょうか。
加藤雄真騎手のアーニャアザザマスも道中は勝ち馬と同じような位置を追走していましたが、ゴール前では馬群を割ってよく伸びて3着でした。
2024年12月12日(木)シャイニングドリーム賞
優勝馬レッドサラマンダー
レッドサラマンダーは今回初めて山崎誠士騎手が手綱をとりましたが、佐野遥久騎手で前回勝ったときと同じように最後方からの追走でした。ただ前のペースが上がらなかったこともあって、向正面半ばで一気に仕掛けて行きました。終いの脚がしっかりした馬ですから、ハナまで行き切ったところで勝ったと思いました。
直線では後続を離して、唯一1番人気のラブソングサガシテが食い下がっていましたが、1馬身半差をつけての完勝でした。早めに仕掛けると最後に一杯になってしまうリスクはありますが、今回は山崎騎手が思い切って仕掛けた判断がよかった。長く脚を使ってバテることがないですから、3歳以降、長い距離で期待できそうです。