コラム
佐々木竹見・王者の眼差し

佐々木竹見 プロフィール写真

佐々木竹見(ささき たけみ)

元川崎競馬所属騎手。“鉄人”の愛称で知られる国内最多勝記録・7,153勝をあげた日本を代表する名手。
現在は地方競馬全国協会の参与として騎手候補生である後進の指導を行うほか、競馬のPRのために各地のイベントなどにも出演している。

令和6年度第4回開催 スパーキングレディーカップJpnIII

 7月1~5日の開催でメインとして行われた、牝馬によるJpnIIIのスパーキングレディーカップは、後方待機のアーテルアストレアがゴール前で見事に差し切り、2着には大井のキャリックアリードが入りました。
 その日の最終レースに行われた、川崎ジョッキーズカップ第6戦は、逃げた佐野遥久騎手が先頭で直線を向きましたが、直後につけていた増田充宏騎手のグラスアラバニーユが抜け出して勝利。1馬身差で2着に加藤雄真騎手が入り、今年デビューの新人騎手が見せ場をつくりました。
 最終日、最終レースに行われた川崎2000シリーズ・ネメシス賞は、3番手につけたエレノーラが直線で後続を突き放し、デビューから4連勝としました。鞍上は町田直希騎手でした。
 今回はこの3レースについて、佐々木竹見さんにうかがいました。(聞き手・構成/斎藤修)

2024年7月3日(水)スパーキングレディーカップJpnIII

優勝馬アーテルアストレア


 地方の2頭が先行して、さらにヴィブラフォンもこの2頭を突くように続いて、前は息が入らないハイペースになりました。
 勝ったアーテルアストレアは、後方2番手からの追走でした。仕掛けたのが3コーナーからで、そのタイミングでよく勝ったと思います。前が飛ばした流れも向きましたが、結果的に早めに行かなかったのがよかったと思います。3~4コーナーで外からまくっていく勢いも違いましたが、直線では外からよく伸びました。
 キャリックアリードは、3~4コーナーで内から位置取りを上げてきました。4コーナーではバテて下がってた先行2頭の外に出して、直線ではうまく抜けてきました。赤岡騎手は最高にうまく乗りましたが、勝った馬が強かった。最後はクビ差ですから惜しかった。いいレースをしたと思います。
 ヴィブラフォンは、ハイペースの3番手から、直線一旦は先頭に立って、よく3着に粘りました。もう少し抑えていけばチャンスはあったかもしれません。
 ペースを考えるとスピーディキックは中団のいい位置につけていました。直線で内から伸びかけるような場面もありましたが、伸びきれませんでした。3コーナーでラチ沿いから赤岡騎手に先に行かれてしまいましたが、進路を譲らず先に行っていれば、また結果は違ったかもしれません。ただ今回は直線での伸びもいまひとつでした。

2024年7月3日(水)川崎ジョッキーズカップ第6戦

優勝馬グラスアラバニーユ

 佐野騎手(ショウナンマナ)は抜群のスタートで逃げましたが、町田騎手(アスミ)が2番手で、勝った増田騎手(グラスアラバニーユ)は内の3番手、いい位置につけて楽に追走していました。加藤騎手(グレースミューズ)はその外につけました。
 増田騎手は4コーナー手前で行き場を探すようなところがありましたが、直線を向いて町田騎手の勢いがなくなって下がってきたところで、そこをうまく抜け出してきました。
 加藤騎手も外からよく伸びましたが1馬身差で2着。勝ち馬との差は、4コーナーで通った内・外の差だったと思います。
 1番人気だった佐野騎手は、最後一杯になって4着でした。ただ今開催は4勝をあげる活躍でした。よく乗れています。
 町田騎手の馬は楽に2番手につけていましたから、もう少し伸びてもいいと思いましたが案外でした(5着)。
 ジョッキー対抗戦にしてはめずらしくペースが落ち着いて、3着の古岡騎手(ウインプロスト)だけは中団から伸びてきましたが、先行した馬たちでの決着でした。

2024年7月5日(金)ネメシス賞

優勝馬エレノーラ

 エレノーラは、ここを勝ってデビューから4連勝としました。ゲートはタイミングが合わずにやや出遅れましたが、ほとんど仕掛けなくても好位の内、3番手につけました。スタートしての行きっぷりからして他の馬とは違いました。
 レースは、途中で動いていく馬もなく、淡々としたペースで進みました。向正面の半ば過ぎから全体が徐々にペースアップして、エレノーラの町田騎手はどこで動いていこうかとタイミングをうかがっていました。3コーナーから仕掛けて、4コーナー手前では前が詰まるようなところがありましたが、(外2番手の)山林堂騎手(ベルタント)が下がりはじめましたから、そこで前に進路ができました。直線で先頭に立つと、楽に突き放しました。逃げたトーセンサマンサが2番手に粘れるゆったりしたペースで、どの馬も能力を発揮できるような流れで、エレノーラはそれで5馬身差をつけましたから、このあたりのクラスでは能力が違った感じです。