コラム
佐々木竹見・王者の眼差し
佐々木竹見(ささき たけみ)
元川崎競馬所属騎手。“鉄人”の愛称で知られる国内最多勝記録・7,153勝をあげた日本を代表する名手。
現在は地方競馬全国協会の参与として騎手候補生である後進の指導を行うほか、競馬のPRのために各地のイベントなどにも出演している。
令和6年度第7回開催 戸塚記念(SI) 他
9月2~6日の開催はダブル重賞。4日に行われた3歳馬による戸塚記念は、京浜盃JpnIIを制して以来の復帰戦となった大井のサントノーレが2着に6馬身差をつけて能力の違いを見せました。鞍上は笹川翼騎手でした。
5日に行われたのは、昨年から重賞に格上げとなった2歳馬による若武者賞。断然人気に支持された鈴木義久厩舎のベアバッキューンが、2着に9馬身差をつける圧倒的な強さでデビューから3連勝としました。鞍上は町田直希騎手でした。
初日のメインに行われた馬産地日高特別は、アーバンデザインがゴール前で差し切って快勝。負傷療養から3カ月ぶりに復帰した野畑凌騎手は開催初日から勝ち星を挙げました。
今回はこの3レースについて、佐々木竹見さんにうかがいました。(聞き手・構成/斎藤修)
2024年9月4日(水)戸塚記念
優勝馬サントノーレ
サントノーレの笹川騎手は1番枠で好スタートを切りましたが、無理して行くこともなく前を見ながら馬なりで2番手の内につけました。最初のスタンド前ではスローペースになったこともあって掛かるような素振りを見せ、普通なら外に持ち出して行かせてしまうところですが、よく内で我慢させました。
向正面では外から2、3頭が仕掛けて来たところで、サントノーレも合わせるようにペースアップして3コーナーでは自然に先頭に立ちました。あそこでも抑えたままだったら内に包まれてしまうので、外から来られたタイミングで仕掛けていったのはよかったと思います。直線ではあっという間に突き放しました。
どんなレースをしてもおそらく勝ったでしょうが、笹川騎手は最高の騎乗をしたと思います。レースでは初騎乗でしたが、調教にも乗りに行ったということですから、ある程度仕掛けのタイミングなどもわかっていたでしょう。距離も長いほうがよさそうですし、まだまだよくなると思います。
2024年9月5日(木)若武者賞
優勝馬ベアバッキューン
勝ったベアバッキューンは、互角のスタートから仕掛けてハナをとりに行きました。能力差もあったと思いますが、競りかけてくる馬もいませんでした。3~4コーナーでも楽な手応えのまま先頭で、直線で追い出されると2着に9馬身差をつける圧勝でした。直線、セーフティリードでも追っていたのは、馬が気を抜かないように、今後のことも考えてのことでしょう。今回のメンバーではちょっと能力が違っていた感じです。テンに気合をつけて行って、終いもあれだけ伸びる。1分36秒4の勝ちタイムも2歳馬のこの時期とすれば優秀です。
ここまではスピードの違いで3戦とも逃げ切っていますが、今後は2、3番手あたりに控えて行ってどうか、そういうことも試していくことになると思います。500キロを超える馬体重で、体型もゴロッとした感じで、あとは距離が長くなってどうかでしょう。
新人の佐野遥久騎手で、前走最後方から直線一気を決めたレッドサラマンダーにも期待していましたが、見せ場がありませんでした(6着)。向正面では馬群のうしろからさらに10馬身以上も離れた最後方で、さすがにあの位置取りはどうだったでしょう。後方から行くにしても、馬群からあまり離されない位置につけて行ってほしかったです。
2024年9月2日(月)馬産地日高特別
優勝馬アーバンデザイン
1番人気のカレンチャンキー(山口達弥騎手)が単騎で逃げましたが、からんでいく馬もいなかったのでそれほどペースは速くなかったようです。
勝った野畑騎手のアーバンデザインは3番枠からでも中団に控えて行きました。向正面で外に持ち出して、3コーナーあたりから仕掛けて行きましたが、4コーナー手前では前にいた森泰斗騎手(カルナック)の内に行きました。これがひとつ勝因でしょう。直線よく伸びて、ゴール前は3頭の接戦を制しました。最後は半馬身差でしたから、4コーナーで森騎手の外に行っていたら届かなかったかもしれません。あそこで内に行く判断はよかったと思います。
ただ野畑騎手は直線で追ってくるときに上体が動きすぎるのと、もう少し手綱を短く持って、落ち着いて追ってこられるといいと思います。