コラム
佐々木竹見・王者の眼差し

佐々木竹見 プロフィール写真

佐々木竹見(ささき たけみ)

元川崎競馬所属騎手。“鉄人”の愛称で知られる国内最多勝記録・7,153勝をあげた日本を代表する名手。
現在は地方競馬全国協会の参与として騎手候補生である後進の指導を行うほか、競馬のPRのために各地のイベントなどにも出演している。

令和6年度第9回開催 ロジータ記念(SI)他

 11月11~15日の開催はダブル重賞。12日に行われた2歳牝馬によるローレル賞は、直線を向いてずらりと広がった横一線からウィルシャイン(船橋)が抜け出し、デビューから3連勝としました。鞍上は船橋の本田正重騎手でした。
 13日に行われた3歳牝馬によるロジータ記念は、8番人気のローリエフレイバー(大井)が直線3頭の接戦を制しました。鞍上はデビュー3年目、川崎の野畑凌騎手でした。
 そして川崎ジョッキーズカップ第9戦は、9番人気ベニノパールに騎乗した新人・加藤雄真騎手がゴール前で豪快に差し切りました。2024川崎ジョッキーズカップは残すところあと1戦。加藤騎手はここまで1勝、2着3回、102ポイントでトップに立っています。
 今回はこの3レースについて、佐々木竹見さんにうかがいました。(聞き手・構成/斎藤修)

2024年11月12日(火)ローレル賞

優勝馬ウィルシャイン


 人気のリオンダリーナが逃げて、サティスファイアがピタリと2番手。馬群はほぼ一団でしたが、その先行した2着は着外となって、中団よりうしろを追走していた2頭が直線大外を追い込んでの決着でした。先行2頭は勝負どころの3コーナーあたりでも競り合うように後続を離して行きましたから、かなり厳しいペースだったと思います。1、2着馬はともにスタートでダッシュがつかず、後方からになりましたが、結果的にそれで展開が向きました。
 勝ったウィルシャインの本田騎手はその位置でも慌てずうまく乗っていました。佐藤裕太調教師も、ここ一番ではうまく仕上げてきます。デビュー3戦目で、後方にじっくり構えて差し切るというレースぶりですから将来が楽しみです。距離が伸びてもいいでしょう。
 今野騎手のオリコウデレガンスも勝ち馬と一緒に直線よく伸びてきました。3/4馬身差なので、勝っていてもおかしくないレースでした。
 3着のプラウドフレールは、前が速い流れで中団はいい位置取りでした。仕掛けるタイミングもよかったと思います。直線で一旦は先頭に立ちましたが、今回の流れでは、それでもタイミングが早かったようです。
 逃げた1番人気のリオンダリーナは、4コーナー手前で手応えが一杯になって12着。北海道の馬は早くから仕上げるので、よほどうまく使っていかないと難しいのかもしれません。

2024年11月13日(水)ロジータ記念

優勝馬ローリエフレイバー


 ミスカッレーラが単騎で逃げて、前半はやや速いペースで流れましたが、スタンド前の直線、中盤からはペースが落ち着きました。
 勝ったローリエフレイバーは野畑騎手がスタートから追っていって2番手につけました。勢いをつけていったわりには、ペースが落ち着いたところでも折り合いがついていました。野畑騎手はこの馬にはデビューから乗っているので、クセもよく知っているのでしょう。
 道中でペースが落ち着いたぶん、先行2頭に向く展開となりましたが、中団から向正面で早めに追い出してまくってきたポルラノーチェが加わり、直線では3頭の争いになりました。落合騎手はあそこから一気に追ってきて、その勢いからそのまま突き抜けるかと思いましたが、ゴール前ではローリエフレイバーが伸び返しました。直線でポルラノーチェの落合騎手はローリエフレイバーに馬を寄せて行ったことで、最後にローリエフレイバーが伸びたということはあったかもしれません。馬を併せにいかず、離れたまま馬場の中央を追ってくればもしかして差し返されることはなかったかもしれません。ポルラノーチェは2着に負けましたが、一番強いレースをしました。
 それにしてもローリエフレイバーは、2歳時に東京2歳優駿牝馬を勝っていますから、もともと力はあるのでしょうが、この展開でよく勝ち切りました。野畑騎手は追ってくるときでも手綱を長く持って上体が激しく動いています。もう少し手綱を短く持てるといいと思うのですが。

2024年11月13日(水)2024川崎ジョッキーズカップ第9戦

優勝馬ベニノパール

 新人の佐野騎手(ビーナスオーキッド)と1番人気の今野騎手(キーファイン)が競り合うように先行して、向正面では縦長のバラバラの展開になりました。勝った加藤騎手のベニノパールは先頭からかなり離れた6番手の内を追走していました。
 直線では今野騎手が単独先頭で、完全に勝ったかと思いました。ベニノパールの加藤騎手は道中はラチ沿いを走っていましたが、3~4コーナーで外に持ち出して一気にまくって、直線でもよく伸びて、ゴール寸前で差し切りました。今野騎手はこれ以上ない乗り方をしたので、これで負けたのでは仕方ありません。勝った馬と加藤騎手を褒めるべきでしょう。ベニノパールは1番枠からすんなり位置を取ってレースを運べたのもよかったと思います。