コラム
佐々木竹見・王者の眼差し

佐々木竹見 プロフィール写真

佐々木竹見(ささき たけみ)

元川崎競馬所属騎手。“鉄人”の愛称で知られる国内最多勝記録・7,153勝をあげた日本を代表する名手。
現在は地方競馬全国協会の参与として騎手候補生である後進の指導を行うほか、競馬のPRのために各地のイベントなどにも出演している。

平成21年度第11回開催 報知オールスターカップ 他

新年の正月開催、メインの重賞は3日の報知オールスターカップでした。昨年8月にスパーキングサマーカプを制した笠松のマルヨフェニックスが人気になりましたが、勝ったのは船橋の古豪マズルブラスト。07年の大井記念以来、久々の重賞制覇となりました。 今回、佐々木竹見さんに振り返っていただくのは、その報知オールスターカップのほか、元旦の最終レースに行われた初日の出特別と、2日の第10レース、ゴールデンホース賞です。 初日の出特別は増田充宏騎手が、ゴールデンホース賞は藤江渉騎手が勝利ジョッキーとなり、ともにこの正月開催では3勝ずつを挙げる活躍でした。(聞き手・構成/斎藤修)

2010年1月3日(日)報知オールスターカップ

優勝馬 マズルブラスト

斎藤
マズルブラストは好スタートでしたが、4番手に控えました。
竹見
スタートもよかったですが、戸崎騎手は落ち着いてうまく乗りました。最初は掛かって行く感じもありましたが、スタンド前では折り合いをつけています。3~4コーナーでもまだまだ手ごたえは楽でした。さすがにこのあたりは、グレードを使っている馬だけのことはあります。距離の長いところで、こういう展開になれば、力を発揮します。
斎藤
期待されたマルヨフェニックスは厳しいレースになりました。
竹見
人気にもなっているわけですから、テンにもう少し行ってほしかったですね。テンに行けなくても、1周目の直線、流れが落ち着いたところで外に出せればよかったのでしょうが、内で抑えたままでした。大井のように直線が長い馬場ならそれでもいいのですが、川崎ではもう少し積極的に行ったほうがいいですね。
斎藤
向正面で仕掛けて行きましたが、なかなか前には追いつけませんでした。
竹見
あのあたりでは、すでに前も仕掛けていますからね。それでも4コーナーではいいところまで行きましたが、外々を回された上に相当脚を使っています。さすがにそれで直線抜け出すほどの余力はありませんでした。この馬は川崎の馬場で勝った経験もありますから、今回は残念なレースでした。
斎藤
4コーナーでは、先頭に立った高知のグランシュヴァリエが勝ったかと思いましたが。
竹見
そうですね。赤岡騎手は3番手のいい位置を追走していました。川崎では、この馬のように積極的に前に行ける馬は有利ですね。ただ4コーナーで外に膨れたのが残念でした。あそこで内を開けずに走っていれば、すぐうしろにいたマズルブラストにとっては外に持ち出さなければならず、グランシュヴァリエのほうにチャンスがあったかもしれません。ただ遠征してくる騎手にとっては、4コーナーあたりのそういうところが川崎コースの難しいところです。

2010年1月1日(金)初日の出特別

優勝馬 マンツーマン

斎藤
マンツーマンの増田騎手は、スタート後の直線では、何度も外を確認しながら内の3番手でした。
竹見
ブリンカーもしているし、ここでは外に出したかったのでしょうが、出すところがなかったですね。ダッシュ力のある馬なら先頭に行けたのでしょうが、外枠の馬に次々に来られてしまいました。こういうときは、それほど砂をかぶる位置でもないし、ここで我慢するよりしょうがないでしょう。こうした内で我慢させるレースをしていれば、馬は強くなると思います。
斎藤
4コーナーではうまく外に出しました。
竹見
外にいた桑島騎手のジュノベーゼに勢いがあって、かぶされてしまえば出すところがなくなって厳しくなったでしょうが、4コーナーを回ったところで下がりました。マンツーマンにとっては、これで前が空いてくれました。
斎藤
ゴール前は接戦になりました。
竹見
逃げていた佐藤博紀騎手のタワーオブバベルもよく粘っていて、町田直希騎手のキリバスターも外から伸びてきて、いい勝負になりましたが、マンツーマンは内に刺さりながらもよく差し切りました。ただ、ダッシュ力があって、2番手くらいにつけられれば、もう少し楽に勝てたかもしれません。

2010年1月2日(土)ゴールデンホース賞

優勝馬 オーロラフレッシュ

斎藤
オーロラフレッシュもダッシュがあまりよくない感じで、藤江騎手は前に行こうとしている感じでしたが、前が壁になって行けませんでした。
竹見
そうですね。外からどんどん行かれてしまって、行き場がなくなり、中団からになりました。もう少し前の4~5番手につけられれば楽な競馬ができるのですが、中団よりうしろからだと馬群を捌くのに苦労します。
斎藤
それでも、向正面の流れが緩くなったところで、好位まで進出してきました。
竹見
スタートで行けなくても、無理せずに前に行けるということは、それだけ力があるということでしょう。藤江騎手も余裕を持って乗っていました。
斎藤
本橋孝太騎手のオーバルシェープも、直線ではよく伸びてきました(3着)。
竹見
本橋騎手は、ほんとにうまくなりましたね。道中の騎乗姿勢がとてもいいです。