コラム
佐々木竹見・王者の眼差し

佐々木竹見 プロフィール写真

佐々木竹見(ささき たけみ)

元川崎競馬所属騎手。“鉄人”の愛称で知られる国内最多勝記録・7,153勝をあげた日本を代表する名手。
現在は地方競馬全国協会の参与として騎手候補生である後進の指導を行うほか、競馬のPRのために各地のイベントなどにも出演している。

平成21年度第8回開催 鎌倉記念 他

10月5日~9日の開催では、7日のメインに2歳馬による重賞・鎌倉記念が行われ、ホッカイドウ競馬のナンテカが勝利。3着にもブンブイチドウが入り、あらためてホッカイドウ競馬の2歳馬のレベルの高さを見せつけました。 今回はその鎌倉記念のほか、同日、ベニノデヒア(町田直希騎手)が勝ったC1七組、ナイスシリアスワン(森下博騎手)が勝った最終レースの流鏑馬特別を振り返っていただきました。(聞き手・構成/斎藤修)

2009年10月7日(水)鎌倉記念

優勝馬 ナンテカ

斎藤
坂井英光騎手のナンテカは好スタートでした。
竹見
外から真島騎手のレッカが一気に行って、ナンテカの坂井騎手はそのすぐうしろ、2番手につけて、ずっと泥をかぶらないところを走れました。スムーズに一番いいレースをしていますね。馬場が悪くても前に行けるということは、それだけ力もあるということです。
斎藤
1番人気のブンブイチドウは、今回岩田騎手でしたが、スタートしてうしろから2番手でした。で、そのすぐ前が2着に入る桑島騎手のドラゴンキラリでした。
竹見
それにしても岩田騎手はずいぶんうしろから行きましたね。3~4コーナーでも、うしろから4番手あたり。あの位置から、最後はよく追い込んできました。桑島騎手のドラゴンキラリも、砂をかぶりながよく伸びてきました。
斎藤
ブンブイチドウは、もう少し前には行けなかったんですかね。
竹見
ゲートはうまく出ているんですが、追っているのに前には行けませんでした。せめてもう少し前の、中団くらいにつけられたら勝っていたのではないでしょうか。それでも、こういう砂をかぶるレースをしていれば、馬は強くなります。北海道には、ほんとうに強い馬がたくさんいますね。

2009年10月7日(水)C1七組

優勝馬 ベニノデヒア

斎藤
町田騎手のベニノデヒアは、無理には行かず、控えました。
竹見
ダッシュはあまりよくなかったですね。ただ、この馬は終いがいい馬なんです。雨馬場になると、どうしてもみんなテンに行きたがってペースが速くなりますから、最初から控えるつもりだったのかもしれません。
斎藤
レース的には、前の2頭(ファンタストウィン、ミカヅキカムイ)が飛ばしてペースが速くなって、そのうしろにつけた今野騎手の1番人気アラタカが勝つようなレースでした。
竹見
今野騎手はスタートしてサッと3番手につけて、前の2頭はもっと行け行けと思っていたでしょう。前が飛ばしてくれたおかげで、今野騎手のアラタカには理想的なレースになりました。
斎藤
町田騎手は向正面からムチが入っていました。
竹見
3コーナーあたりでも、まだ前とは差があって、直線でのあの位置からよく勝ったと思います。最後は、ほんとうによく伸びました。
斎藤
今野騎手は、直線を向いたところでは手ごたえもよくて、勝ったと思ったでしょうね。
竹見
いい手ごたえで楽に行ってたけど、案外追ってから伸びない馬なのかもしれません。
斎藤
勝ったベニノデヒアですが、水の浮く道悪で、中団から伸びてくる馬もめずらしいですよね。
竹見
雨馬場が得意な馬もいますからね。それと、町田騎手は追い出してからいいところがあります。最後、手綱を持ち替えたりしているところもうまいですよ。

2009年10月7日(水)流鏑馬特別

優勝馬 ナイスシリアスワン

斎藤
森下騎手のナイスシリアスワンは、2番手につけて、4コーナーで先頭、直線抜け出すという理想的なレースだったのではないでしょうか。
竹見
森下騎手のナイスシリアスワンは、2番手につけて、4コーナーで先頭、直線抜け出すという理想的なレースだったのではないでしょうか。
斎藤
ところで2着に追い込んでくる町田騎手のコッツウォルズですが、かなり離れた最後方からでした。
竹見
最初から、うしろから行くと決めてたんでしょう。それにしてもだいぶうしろからでした。
斎藤
こういう脚質の馬なのでしょうか。
竹見
馬場が悪いので、ほかの馬は仕掛けて行っているのに、町田騎手はスタートしてすぐに抑えていました。これでは離される一方です。スタートがよければ、もう少し前に行ったほうがいいと、町田騎手には話したことがあるんです。今回であれば、スタートして控えたら十分にスペースはありますから、内に切れ込んでいけばよかったんです。そうすれば楽に先行集団のうしろにつけられました。
斎藤
コッツウォルズは、4コーナーでも、うしろから2番手でした。ほかの馬は上がり3ハロンが40秒以上かかっているのに、この馬だけは36秒台だったのには驚きました。
竹見
直線では、ほかの馬はみんな止まってしまい、伸びているのはこの馬だけでした。ゴール前はちょっと脚を余している感じもありました。もう少し最初に行っていれば、勝つチャンスはあったと思います。