コラム
佐々木竹見・王者の眼差し
佐々木竹見(ささき たけみ)
元川崎競馬所属騎手。“鉄人”の愛称で知られる国内最多勝記録・7,153勝をあげた日本を代表する名手。
現在は地方競馬全国協会の参与として騎手候補生である後進の指導を行うほか、競馬のPRのために各地のイベントなどにも出演している。
平成21年度第2回開催 伊藤裕人騎手初勝利 他
5月20日の第1レースで、今年4月にデビューした伊藤裕人騎手がうれしい初勝利を挙げました。 佐々木竹見さんは月に1~2度、地方競馬教養センターで騎手候補生の指導をしているため、もちろんこの伊藤騎手のこともデビュー前からよく知っています。今回は、まずその伊藤騎手初勝利の騎乗ぶりについてうかがいました。 そのほか、20日に酒井忍騎手で2連勝となったノゾミヒカルのレースと、新設の川崎マイラーズを振り返っていただきました。(聞き手・構成/斎藤修)2009年5月20日(水)伊藤裕人騎手初勝利
優勝馬 エイコーロンシャン
- 斎藤
- 伊藤騎手はスタートで思い切ってハナに行きました。
- 竹見
- 新人は3キロ軽いんだから、スタートで行けるようであれば、積極的に行ったほうがいいんです。終いに追い込んでくるというのは、まだなかなか難しいですからね。
- 斎藤
- 教養センターにいたときと比べて、騎乗姿勢などはどうですか。
- 竹見
- いい姿勢で乗っていますね。身長の高い騎手は、彼のように少しお尻を上げて乗ったほうがいいんですよ。教養センターでは、べたっとした乗り方をしていたので、お尻を上げて乗ったほうがいいと教えたんです。かなり姿勢はよくなりました。
- 斎藤
- 直線を向いてからは、いかがですか。
- 竹見
- 戸崎騎手のショパンが4コーナーあたりでも手ごたえがよくて、戸崎騎手はおそらく交わせると思っていたのではないでしょうか。伊藤騎手のエイコーロンシャンは、直線で一旦は交わされそうになったものの、差し返しました。追い出してからの姿勢もいいし、馬に負担のかからない、とても柔らかい乗り方をしていると思います。
- 斎藤
- 将来的にはどうでしょうか。
- 竹見
- これからいい馬にどれだけ乗れるかでしょう。若い騎手はとにかく数多く乗らなければうまくはなりません。がんばってほしいですね。
2009年5月20日(水)特選B3三組
優勝馬 ノゾミヒカル
- 斎藤
- ノゾミヒカルの酒井忍騎手は2番手からでした。
- 竹見
- 酒井騎手は出ムチを入れて行きました。行く気はあったと思いますが、外から町田騎手のマルダイビレーが一気に来たので、酒井騎手は無理せず2番手に控えました。
- 斎藤
- ノゾミヒカルは、あまり手ごたえがよさそうには見せませんでしたが。
- 竹見
- 酒井騎手は3コーナーあたりからは仕掛けて行ったのですが、たしかに馬の反応はあまりよくなかったですね。おそらくそのあたりで後続を離してしまいたかったのでしょうが、馬が行ってくれませんでした。直線でも、追ってからちょっと渋い馬ですね。
- 斎藤
- ゴール前、森下騎手のスタークロスが差を詰めてきました。
- 竹見
- このレースは、ベテランの騎手ばかりで上位争いとなりましたから、どの馬にも不利がなく、それぞれ持てる力を十分に発揮したと思います。
2009年5月20日(水)川崎マイラーズ
優勝馬 ノースダンデー
- 斎藤
- ノースダンデーの左海誠二騎手は、スタート後、無理には行きませんでした。
- 竹見
- 外枠だったので、内から行く馬を見て、すんなりと3番手のいい位置につけました。ダッシュ力のある馬は楽にいい位置をとれるので、やはり圧倒的に有利です。
- 斎藤
- ノースダンデーの完勝でしたね。
- 竹見
- 左海騎手の手ごたえは3~4コーナーあたりでもずっと楽でした。ノースダンデーは2歳のときに平和賞を勝って、そのあとはしばらく成績がよくなかったですが、よく力をつけてきたと思います。
- 斎藤
- 戸崎騎手のマンオブパーサーが、ゴール前でよく伸びてきましたね。
- 竹見
- マンオブパーサーもいい位置につけましたが、59キロでもあり、このレースぶりで負けたのではしかたありません。最後届かなかったのは斤量の差でしょう。同じ斤量ならこの馬が勝っていたかもしれません。
- 斎藤
- アートルマンは今回も中団からでした。
- 竹見
- アートルマンの的場騎手は、スタート後は意識的に抑えて6番手からでした。末脚勝負だったのでしょう、最後はよく伸びてきました。
- 斎藤
- アンパサンドは、前走正月の報知オールスターカップで、東京ダービー以来久々に勝ち星を挙げていましたが、今回は残念な結果でしたね。
- 竹見
- 3~4コーナーで先行争いにからんでいきましたが、結局は8着でした。もっと走ってもいいと思いますが、今回は直線まったく伸びませんでした。