コラム
佐々木竹見・王者の眼差し
佐々木竹見(ささき たけみ)
元川崎競馬所属騎手。“鉄人”の愛称で知られる国内最多勝記録・7,153勝をあげた日本を代表する名手。
現在は地方競馬全国協会の参与として騎手候補生である後進の指導を行うほか、競馬のPRのために各地のイベントなどにも出演している。
平成20年度第13回開催 東風特別 他
2008年度の南関東最終開催となる3月29日~31日の3日間開催は、今年初のスパーキングナイターとして行われました。 29日のメインは山崎誠士騎手、30日のメインは今野忠成騎手と、それぞれ川崎所属騎手が勝ちました。今回はこの2レースと、最終日の最終レースに行われた川崎ジョッキーズカップを振り返っていただきました。(聞き手・構成/斎藤修)2009年3月29日(日)東風特別
優勝馬 バルバンクール
- 斎藤
- スタートで、山崎誠士騎手のバルバンクールと、水野貴史騎手のミヤビツヨシオーが競り合いましたね。
- 竹見
- ミヤビツヨシオーはハナに行けば粘りますからね。(調教師から)前に行けと言われていたんでしょう。ただ、バルバンクールが2番、ミヤビツヨシオーが大外の12番。バルバンクールの誠士君も譲らない構えでしたから、外の馬はよっぽど速くない限り前へは行けません。
- 斎藤
- バルバンクールは、直線でも後続を寄せつけませんでした。
- 竹見
- 3コーナーあたりから後ろが追ってきましたが、4コーナーではみんな脚いろが一緒になってしまいました。バルバンクールは内枠に入ってハナを譲らなかったのが勝因でしょう。
- 斎藤
- 1番人気、的場文男騎手のメインバンクが2馬身差の2着でした。
- 竹見
- バルバンクールとミヤビツヨシオーが前で競り合って、的場騎手はそのすぐ後ろの一番いい位置につけられました。この馬も、このクラスでは力が上ですね。
- 斎藤
- 川崎の1600メートルは、やはり1コーナーまでが勝負ですか。
- 竹見
- そうですね。ただ、あまり無理して行ってもよくないんです。ダッシュがあまりよくないような馬が外枠に入ったときなどは、じっくりと構えて内のいい位置をとれることがあるので、むしろいいときがあるんです。
2009年3月30日(月)陽春特別
優勝馬 グランドバイオ
- 斎藤
- 1番人気、今野忠成騎手のグランドバイオは中団からでした。このレースは、東風特別とは違って前に行く馬がなく、スタート後はどの騎手も他の馬の出方をうかがっている感じでした。
- 竹見
- その中でも、真島君のアイウィルウインが前に行く馬なので、行きましたね。2番手の御神本君(クリノソーニャ)も楽に2番手。追って行ったのは坂井君(トキノフレンチ)くらいで、これが3番手でした。
- 斎藤
- 今野騎手は、最初から中団を狙っていたんでしょうか。
- 竹見
- そうですね。終いの脚がいい馬ですから、直線に賭けていたんでしょう。どの馬もそれぞれいい位置がとれたと思います。
- 斎藤
- 直線では、内から藤江渉騎手のヤマイチカチドキも抜けてきました。
- 竹見
- 藤江君は、4コーナーで外に出そうと思ったんですが、今野君に進路をふさがれました。それでも、直線を向いて内が開いたので、そこからうまく抜け出してきました。川崎は4コーナーのカーブがきついですから、どうしても外に膨れることがあります。ただ、外の今野君はうまく回りましたね。ここは、やはり外を回ったほうが安全です。グランドバイオとヤマイチカチドキは、このクラスでは力が抜けていましたね。
2009年3月31日(火)川崎ジョッキーズカップ
優勝馬 フリートブルー
- 斎藤
- 1番人気のフリートブルー(山崎誠士騎手)がすんなりとハナに行きました。
- 竹見
- このレースは川崎の騎手ばかりで、みんな、フリートブルーが強いのはわかってますから、競りかけて行きませんでした。
- 斎藤
- 結局、行ったままの決着でした。
- 竹見
- 今回は馬群が固まらずにバラケました。藤江君(ヒカルオンリーワン)、町田君(アコニットヒカル)、金子君(タイセイユニオン)らの人気どころがいい位置につけて、そのままでした。フリートブルーは1年くらい前はずっと連勝していた馬で、このクラスではさすがに強いですね。ただ、テンから楽して行って、もっと楽に勝てるかと思いましたが、最後は思ったほど余裕はありませんでした。そのあたり、7歳という年齢でしょうか。